メガネや財布を置き忘れます。買い物に行ってもたいてい1つか2つ買い忘れて戻ります。
よく知っている人の名前がとっさに思い出せなくなります。
用事をしに二階へ上がった途端に、何をしに来たのか忘れたりもします。
たまには鍋もこがします。

40歳を過ぎた方なら、どなたもこのような経験をお持ちだろうと思います。
実はこれらの物忘れは病気ではありません。正常な老化にともなって起こってきたものなのです。

 正常な老化による物忘れの特徴は4つあります。

1つめは、出来事の細部を忘れても、出来事そのものは決して忘れないこと。
2つめは、必要な時に限って思い出せないこと。 
3つめは、記憶力の低下を自覚し、困らないように工夫していること。
4つめは、意欲や関心、判断力など、記憶以外の能力に変化がないことです。  

 


第1に、自分の経験した出来事そのものを忘れます。
第2に、思い出せないのではなくて、最初から頭に入っていないという感じになります。
第3に、自分の忘れっぽさを自覚しなくなり、記憶を補う工夫をしなくなります。
第4に、判断力や意欲、計算や日時の理解など、様々な能力も次第に低下していきます。

ですから、たとえば同窓会に出席したこと自体を忘れていたり
(私達なら誰が来ていたかは忘れても、同窓会に行ったことは忘れません)

メモをしなくなったり
(私達ならうっかり忘れを予防するためにいろいろな工夫をします)

自分が財布を置き忘れたことを忘れて、誰かが盗ったと言ったりします
(私達なら、しまった、またどこかへ置き忘れた!と考えます。決して人のせいにはしません)

 


でも、それはかまいません。物忘れの質に変化がない限り痴呆にはならないのです。逆に、ほんの数回でも質の異なる物忘れが現れたなら、痴呆の疑いはないかと用心していただきたいと思います。

世間ではまだ、徘徊、迷子、盗られた妄想、夜中に寝ないで騒ぐ、トイレ以外の場所で排尿するなど、周囲の者を困らせる症状が現れてから痴呆の診断を受ける場合が多いように見受けます。
これらのいわゆる問題行動は、実は痴呆が中等度まで進行してから出てくる症状です。

ですから、問題行動が現れる前に、異質な記憶障害に気づいた時に、念のために専門医で診察を受けられることをおすすめ致します。どんな病気でも早期発見・早期治療が大切です。

痴呆も例外ではありません。